インタビュー:佐山氏に聞く「復興、破局、復旧はトキのワ ー独りの出版人としてー」

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編集部:チャリティ企画では何を書いたのですか。

佐山氏:有志による緊急電子出版で『サッカーの力』を総合タイトルにしていました。そこで書いたことは、サッカーの空間認知は人知のレベルで行われていて、岩手県の大船渡で記録されたという23.6メートル(宮古市では40.4メートル)の巨大津波を想うにつけ自分もまた無力感に襲われる。あれほどの破壊を目の当たりにすれば、第一次大戦による大量死後にスポーツ文学が栄えたように人間の身体をかけがえのないものとして逆に再認識するに違いない。思い上がり、驕慢とは無縁の新たな公共倫理のかたちが見えてくるのではないか──ということでした。悲願を各々がまっとうに生きるしかないという結論は、第二次大戦後の復興期の日本人の生き方と重なります。

編集部:キーワードは「復興」?

佐山氏:実は震災の前から経済と感性の復旧・復興期としての認識に立つべきだと若手編集者にはよく言っていたんです。でも、就職で苦労した割にはなんだかピンと来ないみたいでね。そもそも人生は復旧と復興と破局の繰り返しとも言えるわけですよ。写真家の林忠彦さん(1918-1990)が昭和25年に撮った『バー『チェリオ」』という作品がなんとも言えずよろしくて、それが数十年後の自分の心象と交響するんです。大森の焼け跡に建つ掘建て小屋のスタンドバーを背景に、和服姿のママさんがしゃがみこんで七輪の炭火をおこしているだけの白黒写真なんですけどね。

編集部:林さんは無頼派文士の肖像写真を後世に残した方として有名ですね。この間、気鋭写真家による震災関連の写真集が色々刊行されました。

佐山氏:きびしい詮議立てをtwitterでぼくもし続けたけど、他責的になるのはきわめて当然かつ簡単なことでね。知ってますか? 60年代末のロック・ミュージカル『ヘアー(日本語キャスト)』では、「東京電力に火をつけろ」という歌詞が唄って踊られたんですよ。それでまあ『原発報道 東京新聞はこう伝えた』(東京新聞編集局)やメディア・スタディーズの専門家である伊藤守氏の『テレビは原発報道をどう伝えたのか』(平凡社新書)を興味深く読みました。でもこの間はむしろ「写真機王国」の日本で写真家が何を撮るのかに興味がありました。というか、なぜ自分は撮るのかについてきちんと答えてくれる人を無意識のうちに探していたのかもしれない。

編集部:スーザン・ソンタグ(1933-2004)(北條文緒訳・みすず書房)の影響ですか?

佐山氏:忌まわしいものの裏に潜む誘惑に対してどこまで人間は自覚的でいられるのかということをやっぱり考えるよね。『他者の苦痛へのまなざし』の影響は『ハッピーバースデイ3.11 あの日、被災地で生まれた子どもたちと家族の物語』(並河進著/小林紀晴 撮影・飛鳥新社)という写真集に思いを結晶させた小林紀晴さん(1968-)にも与えています。